10月22〜24日に奈良県新公会堂で行われた「奈良文書20周年記念会合」の会議最終日にオブザーバーとして参加しました。世界文化遺産の「真正性(Authenticity)は1964年に採択された「ヴェニス憲章」に基づき判断されてきましたが、ネパールの木造建築、法隆寺や姫路城などの歴史的建造物は、この「石の文化」の真正性を判断する憲章の限界を超えるため、1994年に奈良で開催された「真正性に関する奈良ドキュメント」において「木の文化」「土の文化」の真正性を判断するための「真正性に関する奈良ドキュメント(以下、奈良文書)」が採択されました。今回、奈良文書の採択20周年を記念して奈良の同じ会場で、世界各国から世界文化遺産保全の第一人者約50名が一堂に会し、奈良文書の作成経緯を振返ると共に、過去20年間の奈良文書適用の事例を確認し、今後も奈良文書が文化遺産の在り方を考えるにあたり参照される文書として有効性を維持するように、将来への展望を開く提言を行うとの趣旨で国際会議が開催された訳です。西洋(石の文化)の一部の専門家(私の目の前に座っていた方など)には様々な意見があることをふまえながらも、石の文化に特定せず、伝統技術などの無形の文化が維持され、それにより真正性が保持されることの重要性が再認識されたことは、木造建造物の文化財を多く抱えるわが国にとってはもちろんのこと、「木の文化」「土の文化」を継承してきた国々にとっても意義深いことです。NARA+20: ON HERITAGE PRACTICES,CULTURAL VALUES, AND THE CONCEPT OF AUTHENTICITYの宣言という歴史的な場に居合わせられたことは幸運でした。20年前の奈良文書採択の際にご尽力され、その功績で3年前にGAZZOLA賞を受賞された伊藤延男先生に「良く参加されました」と声をかけていただき光栄に存じます。先生には益々お元気で、奈良文書の更なる発展に貢献していただきたいと思います。
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