玉川田園調布の住宅街でさえ、庭の気配が感じられる住宅が減っているように感じます。道路から1mほどの段差と塀があるために中の様子は見えないものの、このような住宅は道行く人に安心感を与えます。
先日、JIAの見学会があり、旧倉田邸の建物や庭を拝見させていただく貴重な機会をいただきました。昭和30年頃の建物 (築57年)と聞き、当時61才だった吉田五十八 (明治27年〜昭和49年)先生が、近代数寄屋建築を発表し始めた初期の作品だと思われます。
終戦後の物がない時代から漸く抜け出し、高度成長を遂げる輝かしい時代において、詳細に亘る設計を結実させる、技術を磨いた職人が居たことに感動すら覚えます。
残念ながら内部の撮影は許可されませんでしたが、玄関アプローチ〜玄関〜庭の景色〜応接間と続くシーンなどを脳裏に焼き付けました。また、この中で繰り広げられる建築と庭の関係は、実に丁寧に考えられており、あらためて日本的な空間は内部と外部を同時にデザインすることで、双方の持ち味を引き出していることに気づかされました。
築57年も経過している建物とは思えないくらい状態が良いことはそれだけで驚きですが、手入れの行き届いた庭も建物と同じくらい大切にされていました。持ち主の方が、設計者の意図に共感し、大切に受け止められた結果だと思います。これからも、この建物の意志(遺志かも?)が継承されることを願います。
2月23日(木)に2回目の見学会があるようです。興味のある方は是非参加してください。
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