日本建築家協会世田谷地域会が主催したイベント「公共建築のこれから〜とことん使う知恵〜」が土曜日の晩に世田谷区長も参加して行われ、多くの区民や学生が集いました。 同日に行なわれた日本イコモスの総会後に行なわれた研究会では、来日中のイコモス会長を交えて「コルビジェの建築作品」の世界遺産推薦に関する問題ならびに20世紀建築の保存について報告と意見交換があり、文化財としての建築と文化財以外の公共建築の保存ならびに使い続けるための工夫について、様々な意見を拝聴する一日となりました。
後者のような文化財を前提とする建物の場合は、オーセンティシティーが問われるため、用途変更などに応じた改造は肯定されない傾向がある一方、必ずしもその時代を象徴する文化的、技術的な価値を有するとは判断されないまでも、人々に愛され、また親しまれてきた公共の建物が、改造という選択ではなく、安全性や古いことを理由に次々と取り壊されている状況に疑問を抱いている人が多いことを知り、心強く思いました。
人口減少社会(90年後に中位推計で4771万人、人口推計 )では、人口が減る中で、国の使える予算はますます限られ、本来100年は利用できる建物を50年足らずで壊し続けることには自ずと限界がやってくるとの指摘や、世田谷区長からも日本全国で既に空き家が700万件(世田谷区では2万5千件)もあることが紹介されました。「坂の上の雲」(日露戦争1904~05年)は約100年前の話ですが、100年後の孫の世代には日本の姿はかなり変わっているものと想像されます。
これからは、質の高い建物をリノベーションしやすいように造り、使い続けるための工夫が益々求められる時代であることを再認識しましたが、ドイツ人建築家で世田谷地域会メンバーのアンドレア彦根さんが、ヨーロッパでは古いものと新しいものが共存するのが当たり前であり、次々に質が良くとも古い建物が壊されていく日本がヨーロッパのように変われないはずがない「もったいない」と言っていたのは印象的でした。
歴史的な町並みが日本のどこに行っても当たり前となる時代の到来に向けて、次の世代へバトンタッチするための日々の行動が、現代を生きる我々建築家の使命だとの想いを新たにしました。本日も京都会館の保存改修に向けたシンポジウムが、建築家の槙文彦さんや建築史家の鈴木博之さんを交えて行なわれています。もしかすると、大学の設計の授業でもリノベーションや保存改修の課題が既に必要な時代かもしれません。
「もったいない」との想いから大切にされ、長い間愛され続ける、持続可能なものづくりを永遠の目標として、これからも益々、精進したいと思います。
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