歴史的な大災害を経験することとなった2011年も、後三日を残すだけとなりました。今年は改めて、祖国や家族への思いを強くし、日本の伝統を見つめ直す一年にもなりました。その中でも印象に残っているのは和紙との出会いだったかもしれません。
和紙と言えば、個人的には障子紙や京唐紙を利用する機会がある程度で、現代建築では利用される機会は少なくなっています。しかし、和紙は日本の伝統美として高い価値があり、その魅力を伝え残していく必要性を日頃から感じていました。
今年は夏休みを利用して家族で訪れたあきる野ふるさと工房にて、「軍道和紙」の紙漉きを体験しました。紙の原材料として楮(こうぞ)や三椏(みつまた)は聞いたことがありましたが、実はトロロアオイが糊(ねり)の重要な役割を果たすことを知りました。名前の通り、トロトロと粘り気があります。また、保存がきかず腐りやすいため、紙漉きは冬期や寒冷地で作業が行なわれるようです。この伝統的な手漉き紙の製法も、洋紙の普及で衰退してしまったのは誠に残念なことです。
そんな折り、先日、1500年以上の歴史をもつ越前和紙の杉原吉直さんと出会う機会がありました。和紙のもつ可能性に驚かされ、様々な建築の空間演出で利用されていることを知りました。下記の写真は日本橋高島屋でのインスタレーションです。ニューヨークやパリの和食レストランでも空間演出で利用されています。杉原さんは「職人はどうしても造りやすいように造るため、デザイナーや世の中で求められていることに気づかない」と言います。世界に誇れる日本の伝統的な手作り(手漉き)の技術を使いながら国内外へ発信し続けることが、次の100年へと時代を繋ぐのだろうと確信しました。 NHK福井がニュースで越前和紙を詳しく紹介しています。越前和紙、NHK福井放送
来る年は日本をテーマに、和紙や畳などの日本の伝統美と用をますます活用していきたいと思います。皆様、良い年をお迎えください。また、来年もよろしくお願い致します。