シンポジウムの翌日は東本願寺御影堂の修復現場を見学させていただいた。
設計の総合監修をされている伊藤延男先生(文化功労者、東京文化財研究所名誉研究員)の曾祖父様(伊藤平左衛門)が宮大工棟梁として明治25(1892)年に建てた現存する世界最大の木造建築(2891.98平米、高さは東大寺大仏殿が高い)だそうだ。100年の時を超えて、先祖の方が建てた建物を次の100年間も安心して利用できるようにと屋根材の葺き替えを中心とした修復工事を曾孫である伊藤先生が設計監修をされるという事実、そしてそこには長い時を超えた先祖の方との多くの対話がなされたであろうと想像され、感動で胸がいっぱいになった。
今回は合わせて痛んだ材の一部を交換するにあたり京大防災研究所で強度試験を行い確認するなど、現代の技術をも結集された。これはおそらく寺院への敬意と共に、伊藤先生の宮大工への敬意と真心で成就したものと思われる。
一方、御影堂前の山門の造営工事では私の祖父、4代目佐々木嘉平が10代の終わりに、他の若衆10人と共に3代目嘉平から多くを学んだようで、この時に大鉋で天井を仕上げたとの記録が残っている。この鉋はその後、広隆寺(国宝の弥勒菩薩像で有名)の改修工事でも使用され、広隆寺に奉納され現在も軒下に奉額されている。
3代目嘉平と言えば私の曾祖父だけに、何か強いご縁を感じた京都の小旅行だった。
現在、伊藤先生にご指導いただいている研究を早くまとめなくては。。。
御影堂の向拝
伝統構法:小屋裏の貫(幅2寸もあった)
大紅梁の材(大径木)が明治時代に既に調達ができなかった為、はぎ合わせた大虹梁は小屋裏で梯子梁構造による補強を行うことで支えられていた。前日のシンポジウムの成果(計画的な長伐)が100年後に実を結ぶことを期待してやまない。
御影堂が大きい分、山門も相当な大きさであり立派に仕上がっていました。先祖への尊敬の気持ちを新たにし、初心に戻った気持ちで設計活動にも励みたいと思います。