東北関東大震災から1ヶ月が経ちました。
亡くなられた方のご冥福をお祈り致します。
思考停止状態に陥ってしまうほどの大惨事でしたが、漸くブログを書くことにしました。(年末年始は竣工間際のプロジェクトが重なり、また今回の震災のこともあり、3月初旬の建築学会での論文発表を過ぎてもブログを更新できませんでした。)
設計実務や研究では過去の災害を引き合いに出して防災について考える機会は比較的多いのですが、津波によるここまでの災害は想定にありませんでした。災害は忘れた頃にやってくると言いますが、地震大国の日本では、たとえその場所で1000年に一度であっても、それが20カ所となれば、日本のどこかで50年に一度は大災害が起こりうるということになります。また、今回のような原子力災害や広域被害の大都市への影響は世界的に見ても未だ経験がないスケールであることは私が言うまでもないことです。。。
建築基準法は建物の安全を担保する最低限の基準です。もちろん完璧な法律ではなく、昭和25年の基準法施行後に起こった大きな地震の度に法律は強化され、その度に基準が厳しくなっています。その前身の法律があったとしても施行後60年程度では、長い地震の歴史に立ち向かうには経験値が少なすぎるのかもしれません。最低の基準だから最低限さえ守れば良い訳ではなく、それぞれの建物に要求される様々なリスク、地盤の状況、土地の地勢、利用者層、利用時間帯などなど、考慮するべき内容は多岐に亘り、建物の所有者が主体的になって、我々建築家と共に独自の対策を検討するべきではないかと考えます。
安全へのコストと利潤追求は航空機の安全と整備コストにも似たような図式があると思いますが、建築やまちづくりにおいても創造力を働かせてどこまでリスクを回避していくのか、人間の知恵が試されているのかもしれません。。。原子力発電所でなくとも、リスクへの備えは重要であり、のど元過ぎればにならないようにしたいものです。
1月下旬に竣工した約1万平米の本社ビル兼物流センターでは48時間分のG回路(バックアップ電源)を備えています。建物も、病院に要求される耐震基準と防災拠点となる消防署に要求される耐震基準の中間で設計しました。全体の工事費からすればほんの僅かなコストアップであり、常識の範囲内で検討した結果です。竣工直後にこのような大震災を経験し、あらためて防災への備えについてクライアントと共に良く話し合い、また計画して良かったと実感しています。ただし、これで完璧だとは思っていません。自然災害がどのような形で建物に影響を及ぼすか、今後も検証を続けて参ります。
(続く。。。)
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